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オールアバウト・江幡哲也代表取締役社長兼CEO

editorCALLING!2006年06月28日 4:46 PM

低いパーテーションで分けられた、風通しのよさそうな株式会社オールアバウト社内で行われた今回のインタビュー。その中から、フリーペーパーには掲載しきれなかったエッセンスをお伝えするWeb限定企画。

 
全面ガラス張りで開放的な会議室に現れた、江幡哲也代表取締役社長兼CEO。第一印象は「イイ男」という一言に尽きる。少し前に話題になった『人は見た目 が9割』(新潮新書)という本のタイトルが頭に浮かんだ。しかし、江幡社長のロジカルかつ熱い話を聴くうちに、「9割の見た目を持つ人は、残り1割の言葉 にも説得力がある」ということを考えさせられた。
(聞き手は、株式会社ワイズノット代表取締役社長嵐保憲)


「優先順位の高い事業として」
江幡:私にはリクルート時代から、新規事業に対して青臭いところがありました。合理的なデータや背景だけではなく、新しいものは“思い”が なければ上手くいきません。少し恥ずかしいのですが、情報産業に身を置く人間として「情報で世直しをする」ことをずっと考えていました。日本に元気がなく なっていた時期でもあり、その原因の一つとして、社会や国家が豊かであっても個人が貧しいという感覚がありました。もちろんこれは経済的側面だけの話では なく、メンタルな部分も含めてです。そこを情報によって打開したいと考えていました。

極端な意見ですが、マスに向けた情報の氾濫が日本人を弱くしているという思いがありました。常にマスを意識した情報を流し続けるメディアとは違っ た、個々人の役に立つ情報源になりたい。そう考えたとき、このような情報はさまざまな分野の現場で頑張っているプロの人が持っていると気が付きました。そ れを利用できればなんとかなる、しかも永続的に拡大していけると考えました。これが『All About』という事業に、数ある新規事業案の中で最も高い優先順位を付けた理由です。今、当時の考えが現実になり嬉しく思っています。

–(編集部)スマートな見た目からは想像できない熱い話。また、その熱さの中にも確実なビジネスモデルを見て取れる。常に先を見て考え、行動する。若さの中にも豊富な経験に裏打ちされた自信が話の中からひしひしと感じられた。



「新しい展開」
江幡:2001年にその前身である『All About Japan』を開始して、それから5年間は人を集める力と動かす力を持つコンテンツの基盤作りを続けてきました。一昨年、月間のユニークユーザー数が 1,000万人を突破したことで、その基盤作りはある程度完成したと考えました。その基盤の上に新しい事業を展開していける時期に入ったと判断し、ショッ ピングサイトである『All About スタイルストア』や、消費者と専門家のマッチングサービスである『All About プロファイル』といったサービスを開始しました。

情報を得た後にアクションを起こせない、「これ欲しいな」と思ったときに買えないというのはネットとして不十分です。『All About スタイルストア』は、ワンストップで購入していただけるサービスを目的にしています。また商品も、All Aboutが厳選した商品なら、ユーザーに「こだわり」を提案できると考えています。一方、『All About プロファイル』はモノではなく、ユーザーとプロフェッショナルのマッチングサービスです。現在は住宅とマネーというカテゴリがあります。例えば、建築家が 家を建てるのは当たり前です。これまでのAll Aboutにも建築というカテゴリがあり、多くのユーザーに利用されていました。しかし、そこで興味を持っていただいても、これまでは何もお手伝いはでき ませんでした。「建築家を紹介してほしい」というご意見も多く、情報支援だけではなく実現支援もしていくという姿勢のもと、All About プロファイルを開始しました。


「ちょっとしたこだわりの提案」
江幡:社内では、「ちょっとしたこだわりで、人生を豊かに」と言っています。自分らしい判断や選択、目標の実現方法など、ちょっとしたこだ わりを持つことで人生はとても豊かに、面白くなる。といったメッセージを、All Aboutを利用してくださる全ての方に伝えたいと考えています。そして、それが消費につながる。私はこれを、「ちょいこだ消費」と言っています。今後 は、この消費行動がマスになってくるとも考えています。そしてその根幹を支えるのが、今のAll Aboutでは「ガイド」と呼んでいるその道のプロフェッショナルな方々です。

これからはガイドのように企業に属さず、個々で活躍する人が増えていくと思います。それは、客観的なデータからも感覚からも分かりました。そのとき インターネットは、自分をブランディングする手段としてなくてはならない存在です。All Aboutがそういう人たちにとって、価値ある場所になることができれば非常にコミットメントが高く、バリエーション豊富なコンテンツが集まると考え、実 現してきました。読者もハッピー、ガイドもハッピー、売り手もハッピー、そして私たちもハッピーという、ハッピースクエアの構図を作ることができました。

–(編)話しぶりから、All Aboutのガイドには全幅の信頼をよせているようだった。その理由は、ガイドはみんな厳密な審査による選定を経ていることもあるのだろう。本物のプロ フェッショナルのみが、All Aboutのガイドとして活動できる仕組みになっている。



「コミュニケーション力」
江幡:経営原則に、「本質的な価値の追求」「新しい価値の創造」「サービス業精神の徹底」という3つの言葉を掲げています。それ以外に、 「筋の良い事業であれば、失敗した理由は中にある」という考え方を、とても重視しています。そして、失敗した理由の90%はコミュニケーションのミス、ロ スだと考えています。お客さまに関係ないところで迷惑をかけないよう、社内コミュニケーションは重要だと思います。例えばオフィスの作りひとつ見ても、仲 間の顔が見えるようにフラットな作りにするですとか、カフェスペースや喫煙スペースなどの、コミュニケーションが取りやすい場所を設けるといったことをし ています。また、3カ月に1回キックオフという会社の状況を共有する場を持ち、みんなで飲みに行くといったこともしています。そういう「知り合う機会」が 重要です。

–(編)ガラス張りの会議室には、スモーク装置もブラインドもない。ガラス越しに、仕事をしている社員の方々を見る目 は、実に優しそう。また、社員のモチベーションの話になると「みんなの頭の上にモチベーションカウンターみたいなのが出ていたら、経営者としては楽なんで すけどね」と笑っていた。



「成功と失敗の間にあるもの」
江幡:私たちのようなベンチャー企業にとっては、やはり「志」しかないと思います。アスピレーションと言っていますが、その高さが重要で す。もっと砕けた形で言うなら、「あきらめの悪さ」というのでしょうか。頭の良い人は、「このフェーズで上手くいかない」といったように、失敗する理由を 合理的に考え並べると思います。しかし、私は「筋」が良いかということ、そしてこの事業をやるということを徹底的に考え、腹を決めたら盲目的に突き進まな くてはいけないと思います。それが「成功」と「失敗」の分かれ目になるでしょう。もちろん、人の意見を聞かないということではなく、信念の部分で妥協しな いということです。また、ポジティブシンキングでなければパワーも出ません。ネガティブになったら成功するものもしなくなります。よく、新規事業成功の秘 訣を聞かれますが簡単なことです。それは、「成功するまでやる」ということです。

–(編)自信に満ちたその言葉は、ズシンと心に響く。また、「読者にひと言」というお願いでは、「オールアバウト=全ていいかげん、とも読めますがそんなことはありませんので、皆さん利用してください」とユーモアたっぷりのひと言だった。

創業5年で上場を果たした(株)オールアバウト。そのトップが抱くアスピレーション(志)、それは「世直し」だ。一見古くさい言葉を胸に時代の先端 を走り、月間ユニークユーザー数1,500万人というビッグメディアを作り上げた江幡哲也氏。その言葉は、ときに熱く、ときにクールに、ときにユーモラス に展開される。「若さ=勢い」という単純なロジックでは語れない、質の高い経営指南書といえる。

アスピレーション経営の時代
【書籍紹介】
「アスピレーション(志)」。この言葉は、経営上非常に大切な言葉だと思っています。収益を上げるのが経営者としての使命。できなければ、それは「悪」で す。しかし、それだけではこの変革の時代に成功することはできません。長く成長し続けるためには、やはりアスピレーションが必要です。世の中の不条理や不 合理に対して、真正面から向き合い本質的に変えていく。この思いと収益をセットにして高いアスピレーションを生み出すことが、この時代を生き抜くための必 須条件だと思います。(著者より)


カルティエ サントス100【my Favorite】
Cartier SANTOS 100
航空飛行家サントス=デュモンモデルの100周年記念モデル。文字盤には、愛用品らしい小さな傷も見える。一緒に仕事をしてきた「仲間」という雰囲気がにじみ出ている。



江幡哲也代表取締役社長兼CEO江幡哲也(えばたてつや)
大学卒業後、(株)リクルートに入社。さまざまな新規事業の立ち上げに携わる。2000年6月に同社を退職すると同時に、(株)リクルート・アバウトドッ トコム・ジャパン代表取締役社長兼CEOに就任。2001年にインターネット情報サービス『All About Japan』開始。2004年7月に社名を(株)オールアバウトに変更。同年10月にサービス名を現在の『All About』へ。2005年9月にJASDAQ証券取引所に上場し、現在に至る。
株式会社オールアバウト http://allabout.co.jp/