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Close up!

電気通信大学 産学官等連携推進本部特任教授 竹内利明

editor特別インタビュー2006年06月11日 4:12 PM

情報・通信という、現代産業の中核を担う人材を数多く輩出する電気通信大学。同大学では産学の連携に注力し、高い技術を持った大学発のベンチャー企業創出を目指している。

そんな電気通信大学の特任教授で起業支援家として知られる竹内利明教授に、ベンチャー企業と大学の連携について話を聞いた。


竹内利明氏竹内 利明(たけうち としあき)
国立大学法人 電気通信大学
産学官等連携推進本部特任教授
青山学院大学理工学部経営工学科卒業。自動車部品メーカー勤務を経て1991年に有限会社陽明エンジニアリングを設立、取締役社長に就任(現:取締役)。 2000年、電気通信大学共同研究センター客員助教授に就任。2003年、電気通信大学共同研究センター 客員教授に就任。2005年、法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科 客員教授に就任。同年、電気通信大学産学官等連携推進本部 特任教授(常勤)に就任。ベンチャー国民フォーラムJapan Venture Award 2003にて起業支援家部門奨励賞受賞。
電気通信大学 http://www.uec.ac.jp/


大学発のベンチャー企業を監査役の立場で支えるなど、さまざまな起業支援活動をされていますね。どのような思いでそうした活動に取り組まれているのでしょうか。
これまで日本でベンチャーというと、サービス系や営業力で勝負する企業に成功事例が多いと思います。このようなベンチャーが重要なことは当然ですが、日本では独創的で確たる技術を持つベンチャーが、それほど多く育っていないとも言えます。
アメリカではYahooにしてもGoogleにしても、大学生をはじめとする若い人が核になり、世界に冠たる独創的で確たる技術を持つベンチャーが生まれて活躍しています。日本でもそのようなベンチャーが生まれてほしいという思いで、支援活動を行っています。


技術力を持ったベンチャーの創出という点では、大学発のベンチャーもそうですが産学の連携が重要になってくるかと思います。このあたり大学側ではいかがお考えでしょうか。
大学が行う研究は、企業の事業開発から見た場合にイメージとしては二段階ほど基礎寄りです。これが一段階であればお互いに歩み寄れば接点が生まれてくるの でしょう。しかし二段階の差があると、大学の研究者が自分の裁量で歩み寄り、同じように企業が多少歩み寄っても、間にまだ一つ分くらいのギャップが残りま す。商品開発で「デスバレー(死の谷)」とか「ダーウィンの海」などと言われる開発資金や事業化資金の問題以前に、企業と大学が共同研究を始めるのに ギャップがあることを感じます。つまり大学の研究段階から企業が商品化、その収益で開発投資を回収するまでの長い期間にわたって、費用を負担できるかとい う問題がついて回るのです。
この問題の解決策として参考にしたいのが、金沢大学知的財産本部が2004年10月に報告している「GAPファンドの意義と導入可能性調査」です。これに よればGAPファンドとは「大学が、自律的かつ機動的に大学研究室へ比較的少額の開発資金(試作開発・試作テスト資金など)を供与して大学の基礎研究と事 業化の間に存在するGAP(空白・切れ目)を埋めることにより、大学先端技術の技術移転や大学発ベンチャー創出を促していく基金」のことであり、大学の負 担で一歩踏み出すことを提案しています。試作品等にかかる費用を最初に大学が負担し、企業側はその結果を評価して事業化に向けた共同研究を検討するという イメージです。
昨年、文部科学省外郭のJST(独立行政法人科学技術振興機構)がシーズ育成試験、今年はシーズ発掘試験と名前を変えて、GAPファンドに相当する事業を 開始しました。大学の研究者に対して、企業との共同研究につながるように一歩産業界よりに前進する研究を支援する制度です。これは非常に良い試みで、ぜひ ベンチャー企業にも注目してもらいたいと思います。


シーズ発掘試験によるベンチャー企業にとってのメリットとは。
大学の研究者にも、企業に一歩近づいた研究を目指す動きがあります。ただ本人は近づこうとしていても、それが本当に正しい方向なのかは分かりません。近づ いているつもりで実は遠ざかる動きをしていることもあります。シーズ発掘試験は全国の大学から応募が殺到して、当初500件ほどの採択予定を1000件に 増やすようです。これはベンチャー企業にとっても大きなチャンスです。自社の開発テーマに関連する研究を行う大学の研究者を調べてコンタクトしてほしいと 思います。ベンチャー企業から大学の研究者に、ここまで研究を進めてくれれば、次は資金を負担して共同研究をしたいと積極的に働きかける。そうすれば大学 の研究を、一歩自分たちの方に引っ張ってくることができます。シーズ発掘試験では研究の次にくる、開発に対しての資金を助成する制度も準備されています。 一段階ずつステップを踏んで、国の支援を受けながら進めていけばいいわけです。 ベンチャー企業の肝はスピードですので、そんな悠長なことは言っていられ ないという意見もあるでしょう。ただ中核となる事業は今まで通り自社で進めていけば良いのです。時間をかけて取り組んでいくテーマもあると思います。それ は、大学と共同研究することで進展する可能性がありますので、シーズ発掘試験のような制度をうまく活用して、リスクを減らしながら開発ステップを進めるこ とも重要ではないでしょうか。


本において、ベンチャー企業が担う部分についてお聞かせ下さい。
日本人は1980年代までのキャッチアップの時代には、大きなマーケットに対応した量産型で個性のない商品にも満足していました。しかし、現在のような成 熟した社会では多様なものが求められ、多様なものはどうしてもマーケットが小さくなります。大企業は大きなマーケットを必要としていますので、このような 需要に対応することが難しいと思います。それを担うのがベンチャーや中小企業であり、そこで生まれた商品、サービスが、成熟した日本社会の生活満足度を向 上させることになるのです。そして世界中が、このような多様な商品、サービスを求めるようになりますので、より早く、多様なマーケットが求めるものを提供 できるようになった国が今後、経済成長を遂げることになると思います。日本の経済がこれからもよい方向に進んで行くためには、こういった新しいマーケット に挑戦しなければなりません。私は経済だけの問題ではなく、成熟化した社会の生活の質的向上のためにもベンチャー企業が担う役割が重要だと考えています。