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Close up!

COLLABNET ブライアン・ベーレンドルフ

editorIT列伝2006年01月17日 12:21 PM

Apacheの共同開発者の一人で、オープンソース界のリーダー、ブライアン・ベーレンドルフ氏。同氏の推進するバージョン管理ソフトウェア『Subversion』はプロプライエタリソフトウェア至上の世界をSubvert(転覆)できるのか。

オープンソース界の重鎮として、一人のエンジニアとして、その両方向から同氏のソースを読み解く。


ブライアン・ベーレンドルフ氏Brian Behlendorf(ブライアン・ベーレンドルフ)
1999年7月にオライリー社と共同でCOLLABNETを創立。現在は最高技術責任者(CTO)を務める。
Apache Webサーバの中心的な開発者であり、現Apache Software Foundation代表、Mozilla Foundation理事。
COLLABNETの創立以前にもOrganic Online 社を共同設立しCTOを務める。
在社5年間でフォーチュン500に入る会社数十社のインターネット戦略を作り上げるなど、Webの世界に多大な貢献をしている。


(編集部)今回来日された目的をお聞かせください。
日本には年に2、3回COLLABNETの活動で来ています。加えて今回は、11月24日(インタビューは2005年11月22日)に予定されている「OSCJ.net 第一回 OSSプロジェクト公開会議」に出席するのが目的です。
今回のOSSプロジェクト公開会議は、オープンソースコミュニティをどうやって成功させていくか? というのが大きなテーマです。それ以外にもOSCJ.netに参加している方々にお会いして、皆さんと話し合いの場を持たせていただくことになるでしょう。


(編)あらためまして、ベーレンドルフさんの関わっているオープンソースの活動についてお聞かせください。
Apache Software Foundation、そしてMozilla Foundationのボードメンバーとして活動しています。
また次世代型バージョン管理システム『Subversion』を推進するため、技術に関しての講演など行っています。この講演活動は、オープンソースの手法を取り入れた分散開発を企業に推進していく役割を担っています。これは私がCTOを務めているCOLLABNETの目標でもあることです。
COLLABNETのサービスはソフトウェア会社にソフトの開発環境を販売するに留まりません。たとえばオーストラリアのバイオフォージという生物学団体にも使われています。ソフトウェアであればCVSでソースコードをチェックインしますが、ここでは遺伝子情報をSubversionやCVSでチェックインします。どこかの生物学者が今発見した情報を、他の学者は共用サイトですぐに閲覧できるのです。毎日誰かに発見される人のゲノム情報もスムーズに共有できる仕組みです。


(編)CVSからSubversionへ移行する流れがありますが、今後もCOLLABNETでCVSをサポートしていくのでしょうか?
技術者はまずCVSからはじめ、そこからSubversionに移行しているというのが現状でしょう。COLLABNETでは、そのどちらもサポートしていきます。ですが将来的にはSubversionがCVSに取って代わる流れにはあるでしょうね。


(編)インターネットやオープンソースに興味を持たれたきっかけは?
初めてさわったPCは小学校のときに家に置いてあった、LOGO注1 が使えるマシンでした。大学にいた1991年に初めてインターネットというものにふれ、社会的な見地から見てもおもしろいと感じました。本格的にソフトウェアですとかプログラムに興味を持ったのはちょうどそれからです。

インターネットを学び始めたのは1993年のことです。そのときにTCP/IPのようなインターネットのテクノロジーは、一つの大きな会社が作ったものではなく、背景には様々なコミュニティの人々が培った基盤があることを知ったのです。バークレーのUNIX、SendmailやSMTPといったものがまさにそれでしょう。私がそういったものをとても素晴らしいと感じ、成功を予感した矢先にWebという新たなテクノロジーが世に出てきたのです。Webにはブラウザやサーバといったソフトウェアの技術が必要となり、私は必死になってそれらを勉強しました。ちょうどワイヤードマガジン社に入りWebを学校向けに提供するサービスを作っていたころで、このときに初めてサーバというものにふれました。Webサーバの改良に着手し始めたのが1994年のことです。そのころお客さんは、まだ1ユーザーしかいませんでしたけどね。


(編)日本でオープンソースの活動をするにあたっての問題点、難しいところは?
これはまずOSCJ.netの目的からお話しさせてください。日本にもオープンソースコミュニティのあるApacheやFreeBSD、 TurboLinuxなどはオープンソースのコントリビュータとして認められています。OSCJ.netはそのような大きなものではなく、埋もれてしまいそうな小さなアイデア、開発している人たちをインキュベーションするために活動しています。
深刻ではありませんが、カルチャーは問題点に挙げられるかもしれません。オープンソースプロジェクトの最初の段階では、様々なアイデアやデザイン、要求などといったものをディベートする必要があります。欧米では皆で話し合って良いものを作っていこう、そういった感覚で子供の頃からディベートする機会は多くあります。しかし日本の方にとってディベートという文化はあまり馴染みのないものでしょう。そういったところが、せっかく存在するオープンソースの芽を摘むこともあるのではないか? という小さな懸念はあります。これもOSCJ.netで解決していきたいことの一つです。

私が育った80年代中頃というのはホームPCが全盛で、TRS80注2 とかCommodore注3 なんかでよくゲームをしていました。当時のゲームはデザイン、プログラムなど素晴らしいとはいい難いものでしたから、プログラムをこうしたい、デザインをああしたいというモチベーションが湧いてくる。そういったものが後のハッキングへのモチベーション、何かおもしろいものを作ろうという気持ちにつながったと思います。オープンソースのカルチャーはそんな中で培われたのでしょう。ですが最新のXbox360ですとかPLAYSTATION3では素晴らしいゲームが体験できるため、プログラムを直したいという思いは、なかなか湧いてこないのではないでしょうか。こうした時代背景の中でオープンソースのモチベーションを培っていけるのかという懸念はあります。しかしこれは日本だけに限った問題ではないでしょうね。


(編)オープンソース開発にのぞむエンジニアに必要なスキルとはどのようなものでしょうか?
一つには言葉、コミュニケーションスキルは大切になってきます。たとえば、いきなり他の人から回ってきた開発のメーリングリストに“code is broken(コードが壊れてる!)”と乱暴に言い放つのではなく、「このコードはどこかが壊れているみたいだよ」というような柔らかい言い回しができるようなコミュニケーションスキルを持ってください。

Apacheもそうですが、様々なオープンソースは企業で使用されており、要求は必ず企業から寄せられるという事実があります。ただし大部分のオープンソースエンジニアというのは企業のアウトサイドで活動するボランティアですよね。そういったオープンソースのエンジニアを企業は大事にしなくてはいけません。なぜなら企業で使われる様々な技術に彼らが貢献することで、種々のリスクが取り除かれるからです。
優れたオープンソースエンジニアの知識は、その企業がお客様を得ることに十分役立っている。そう考えてほしいのです。

Brian Behlendorf(ブライアン・ベーレンドルフ)
1999年7月にオライリー社と共同でCOLLABNETを創立。現在は最高技術責任者(CTO)を務める。
Apache Webサーバの中心的な開発者であり、現Apache Software Foundation代表、Mozilla Foundation理事。
COLLABNETの創立以前にもOrganic Online 社を共同設立しCTOを務める。
在社5年間でフォーチュン500に入る会社数十社のインターネット戦略を作り上げるなど、Webの世界に多大な貢献をしている。