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IPAフォント

kikaku詳細, NEXTワード2007年12月14日 4:03 PM

2007年10月に独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が一般公開した、高品質な日本語アウトラインフォント。だれでも自由に複製・配布できるよう配布条件が変更されており、電子化された日本語文書と対応ツールにとって画期的なニュースとなっている。


このIPAフォントのどこが画期的なのか、分かりにくいという声もあるようだ。そこで今回のNEXTワードでは、IPAフォントの位置づけと、日本語アウトラインフォントの現状を解説する。

■フォントって何だっけ?

コンピュータのディスプレーに文章を表示したり、プリンターで文書を印刷するとき、『フォント』が欠かせない存在となる。一般的なWindowsパソコンであれば、『MSゴシック』とか『MS明朝』が、このフォントにあたる(以下、MSフォント)。

ワープロで「あいうえお」という文を入力したとき、このフォントを切り替えると、ゴシック体の「あいうえお」や明朝体の「あいうえお」になる。このように同じ文字(字形)であっても、細部のデザインを変えることで、異なる書体になる。「フォント」とは、共通のデザインを持った一そろいの文字の組み合わせを表す。

「フォントなんて知らないヨ」というユーザーにとっても、実はフォントを利用している場面は多い。日本語の文書を扱うときには、何らかの形でフォントのお世話になっている。ワープロソフトや表計算ソフトを使うとき(たとえば、Microsoft社のWordとかExcelとか)、日本語フォントの設定は頻繁に行われ、何も設定しなければ、MSゴシックやMS明朝といったフォントが設定される。Webページが表示される場合も、日本語フォントが自動的に選択されて、文字が表示される。今あなたが読んでいるこの文書も、フォントを使って日本語が表示されている。つまり、パソコンで日本語を表示するとき、ほとんどのユーザーはフォントを利用していることになるのだ(文字情報を画像として保存している場合もあるかもしれないけれど、それは極めて少数派だろう)。

* パソコンで日本語を表示するとき、フォントが活躍している

font101.png

■共通の日本語フォントがないと

現在、多くの人が、Windowsパソコンを使っているが、近年ではマックやLinuxを使っているユーザーも存在感を示し始めている。

実は、ここで問題が発生する。MSフォントは、その名のとおり、マイクロソフト社のOS「Windows」に付属しているフォントである。当然ながら、マックやLinuxには付属していない。Mac版のMicrosoft Officeを購入すれば、MSフォントが付属してくるが、すべてのユーザーは持っていない。

一方で、どのプラットフォームでも文書データを共通でやりとりする環境が整いつつある。ホームページの元になるHTMLファイルはどのプラットフォームでも閲覧できる。ワープロや表計算ソフトなど統合オフィスソフト用の標準ファイル形式も登場した。このようなファイル形式に対応したソフトが増えれば、どのプラットフォームとの間でも、文書をやり取りできるようになる。

ISO(国際標準化機構)は、統合オフィスソフト向けの文書ファイルフォーマットとしてOpenDocumentを採択した。このファイル形式は、Microsoft Officeでも作成可能であり、同じファイル形式を読み込めるツールを使えば、MacでもLinuxでも同じ内容/レイアウトで文書を表示できる。OpenOffice.org(リンク)やロータスノーツ、ジャストシステムの一太郎がOpenDocumentに対応している。また、Microsoft社自身もOffice2007で採用したファイルフォーマットを誰でも利用できるオープンな仕様として公開している。

しかし、MSフォントは、すべてのプラットフォームに用意されていない。フォントが付属されていないということは、Windowsパソコンで作られた文書をマックやLinuxに持っていくと、どのようなフォントで表示されるか不明確であるということだ。それだけなら、問題は小さいかもしれない。異なるフォントであっても、文字の雰囲気が少し違う程度で済む。しかし、フォントが異なると、縦横の比率や文字と文字の間隔など、細部の条件が異なるため、文書のレイアウトそのものが崩れてしまうことになる。

たとえば、Windowsのワードで文書を作成し、フォントとしてMSゴシックを指定した場合、Linuxのオープンオフィスでその文書を開くと、MSゴシックが存在しないため、代替となるフォントを探し出して、異なるフォントで表示する。しかし、MSゴシックでないフォントは、大きさや間隔が異なるために、文書のレイアウトが崩れてしまう場合があるのだ。

たしかに、Windowsに付属のMSフォント をMacやLinuxにコピーすることは、技術的には可能である。しかし、MSフォントはWindowsの一部であり、それだけを取り出して、勝手に複製したり配布することは、Microsoftの権利を侵害することになる。

そのために、Windows上のMicrosoft Officeで作成した文書をやりとりするためには、WindowsとMicrosoft Officeが必要になるという状況が続いている。つまり、統合オフィスソフトのファイル形式が標準化されても、そのメリットを享受できないことになってしまう。

*共通の日本語フォントがないと

font201c.png

■自由に利用できる日本語フォントが欲しい

このような問題を解決するには、どのようなプラットフォームでも共通して利用できる日本語フォントを別途用意すればいい。ワープロなどで文書を作る場合には、この共通日本語フォントを選択して、OpenDocumentなどの国際標準のファイル形式で保存しておけば、どのプラットフォームでも共通して文書を表示・編集できるようになる。

*共通の日本語フォントがあれば

font301b.png

しかし、共通フォントとして利用できる日本語のフォントを作ることは、決して簡単なことではない。これは、日本語が文字の種類が多く、作業量が膨大になるためだ。特に、アウトラインフォントでは、文字の輪郭をひとつづつ定義していくため、さらに時間がかかる。また、ビジネスなどでも利用可能な高品質な日本語アウトラインフォントのデザインは、高度なデザインスキルが要求される一種の職人芸になっているという。高品質な日本語アウトラインフォントを新しくデザインするためには、数億円の費用がかかると言われている。

■IPAフォントの配布条件変更は、どうして画期的なのか

そこで登場したのがIPAフォントである。

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、経済産業省の外郭団体で、日本のITビジネスの旗振り役ともいえる存在だ。

2003年に、IPAフォントは「オープンソースソフトウェア活用基盤整備事業」の成果である「GRASS国際版」(オープンソースの地図情報ソフト)に添付されて公開された。このときは、IPAフォントの配布条件は、GRASS国際版と同梱することとなっていた。その後、IPAフォントは、IPAの各種支援事業に同梱して配布されていった。しかし、そのいずれも、事業の成果物に同梱することが条件であった。そのために、LinuxディストリビュータらがIPAフォントを配布する場合には、IPAの支援事業も同時に収録していた。

この方針が、2007年10月より変更された。これからは、IPAフォントを誰でも自由に複製・配布できる。ただし、現状ではデザインを変更したフォントを再配布することは認められていない。これは、2008年中に認める方針だという。

font401b.png

実際のIPAフォントは、次の5種類の日本語アウトラインフォントをセットにしたものだ。新IPAフォントは、JIS X 0213:2004に準拠しているため、一部の字体が従来と異なっている。

フォント名 フォントファイル 書体  
・IPA明朝 ipap.ttf 明朝体 等幅
・IPA P明朝 ipamp.ttf 明朝体 プロポーショナル
・IPAゴシック ipag.ttf ゴシック体 等幅
・IPA Pゴシック ipagp.ttf ゴシック体 プロポーショナル
・IPA UIゴシック ipagui.ttf ゴシック体 ユーザインタフェース向き

■共通フォントの時代に備えよう

さて、このようなIPAフォントは、周囲でWindowsやMicrosoft Officeを使っているユーザーばかりという 人にとっては、今のところそれほど影響はないかもしれない。しかし、そうでないユーザーは着実に増えているし、内閣府は入札に関するドキュメントはOpenDocumentで提出することを義務付けるという。だから、このような共通フォントを使用する場面も増えてくるだろう。

以前であれば、大口のユーザーが「このツールを使わなければ書類を受け付けない」というようなお達しを出すと、納入業者は泣く泣くそのツールを(有償)で導入する羽目になった。しかし、現在では、OpenOffice.orgのような対応ツールを無償で入手できる。このような混乱は、ほとんど起こらないだろう。

IPAフォントは、次のIPAフォントダウンロードページから入手できる。

あなたも、共通フォントの時代に備えておいては如何だろうか。